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2024.12.08
特定技能「自動車整備」とは?業務範囲や取得条件を紹介
2018年に「出入国管理および難民認定法」が一部改正され、特定技能制度が始まりました(※)。自動車整備分野でも、特定技能1号や特定技能2号の在留資格において、就労を目的とした外国人材の受け入れが認められています。
特定技能「自動車整備」を取得した外国人材には、どのような仕事を任せられるのでしょうか。この記事では、特定技能「自動車整備」の概要や、外国人材が従事できる業務範囲、在留資格を取得する方法について紹介します。
※ 国土交通省「自動車整備分野における「特定技能」の受入れ」
特定技能「自動車整備」とは?
特定技能制度とは、“生産性向上や国内人材確保のための取り組みを行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野(特定産業分野)において、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れていく仕組み”のことです(※1)。
特定技能制度の受け入れ分野は、2024年9月30日の時点で16の分野に分かれており、「自動車整備」もその一つです(※2)。国土交通省によると、これまでに約2,500人の特定技能外国人(2023年12月末時点)が、国内の自動車整備業界で活躍しています(※3)。
2023年6月には、「特定技能2号」の対象に自動車整備分野が追加され、熟練した技能や実務経験を有する外国人材の受け入れが可能になりました(※2)。特定技能外国人の受け入れを通じて、深刻化する人手不足に苦しむ自動車整備業の課題解決につながることが期待されています。
※3 国土交通省「国内において「自動車整備分野特定技能2号評価試験」が開始されます!」
自動車分野に特定技能が創設された理由
特定技能制度の受け入れ分野に「自動車整備」が含まれる理由は、大きく分けて2つあります。
- 自動車整備士を志す若者が減少しているため
- ベテラン整備士の高齢化が進んでいるため
自動車整備士を志す若者が減少しているため
1つ目の理由は、自動車整備士を志す若者が減少傾向にあるからです。
自動車整備の学科に通う高校生を対象としたアンケートによると、「自動車整備士になりたい」と考えている高校生の割合は、高校1年生から高校3年生に進級するにつれて減少しています。高校1年生で「自動車整備士になりたい」と回答した人の割合は全体の61%であるのに対し、高校3年生では31%しかありません(※)。
このような職業への関心度の低下から、自動車整備業界の将来を担う若手人材の不足が懸念されており、特定技能制度の受け入れ分野に「自動車整備」が加わりました。
※ 国土交通省「自動車整備人材に係る課題解決策を取りまとめ、今後実行フェーズに!!」p2
ベテラン整備士の高齢化が進んでいるため
2つ目の理由は、自動車整備士の高齢化が進んでいるためです。
高齢化により、ベテラン整備士の引退が増加した結果、2022年の自動車整備分野の有効求人倍率は4.72倍に達しています。自動車保有台数が多い愛知県の有効求人倍率は5.19倍、自動車保有台数が少ない福井県の有効求人倍率は8.50倍と、全国的に深刻な人手不足がみられます(※)。
一方で、近年の自動車の保有台数はほぼ横ばいで推移しており、自動車整備分野における労働力需要は変化していません。5年後には、自動車整備業界で2万8,000人程度の人手不足が生じることが予想されています(※)。
このことから、生産性の向上や国内人材の確保に向けた取り組みと合わせて、特定技能制度を通じて最大1万人の外国人材を受け入れることが計画されています(※)。
※ 国土交通省「自動車整備分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」p2
特定技能「自動車整備」で可能な業務範囲
特定技能「自動車整備」には、特定技能1号と特定技能2号の2つの在留資格があり、それぞれ従事できる業務範囲が定められています(※)。
在留資格 | 従事する業務 |
特定技能1号 | 自動車の日常点検整備、定期点検整備、特定整備、特定整備に付随する基礎的な業務 |
特定技能2号 | 他の要員への指導を行いながら従事する自動車の日常点検整備、定期点検整備、特定整備、特定整備に付随する一般的な業務 |
細かい業務範囲については、出入国在留管理庁が公開しているジョブディスクリプション(職務記述書)で確認することが可能です。ここでは、特定技能1号・2号を取得した方がそれぞれ従事できる業務の例を紹介します。
自動車整備分野の特定技能1号で従事できる業務
特定技能1号を取得した方は、“自動車の日常点検整備、定期点検整備、特定整備、特定整備に付随する業務”に従事できます。
※1 法務省 出入国在留管理庁「特定技能1号の各分野の仕事内容(Job Description)」
以下の表のとおり、主たる業務に加えて、関連のある業務(“当該業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務”)にも従事することが可能です(※2)。
※2 法務省 出入国在留管理庁「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領」p4
業務の種類 | 例(※1) |
主たる業務 |
|
関連業務 |
|
ただし、特定技能外国人が関連業務のみに従事することは認められません。整備用の部品の販売や発注作業などの業務は、あくまでも主たる業務の補助として行うことができます。
自動車整備分野の特定技能2号で従事できる業務
特定技能2号を取得した方は、“自動車整備分野に属する熟練した技能を要する業務”に従事できます(※)。特定技能1号との違いは、高度なスキルが求められる作業にも従事できる点と、他の要員への指導を行うことができる点です。
※ 法務省 出入国在留管理庁「特定技能2号の各分野の仕事内容(Job Description)」
特定技能2号で従事できる業務の例は、以下の表のとおりです。
業務の種類 | 例(※) |
主たる業務 |
|
関連業務 |
|
特定技能2号を取得した外国人材は、特定技能1号と異なり、在留期間の制限がありません。日本において長期的に働ける外国人材を雇用したい場合は、特定技能2号の資格の有無に着目するとよいでしょう。
ただし、特定技能2号の取得には、一定の実務経験などの条件が設けられています。特定技能1号・2号それぞれの取得要件についても事前に確認しておきましょう。
特定技能「自動車整備」の取得方法
ここでは、特定技能「自動車整備」の取得方法について、特定技能1号・2号に分けて紹介します。
自動車整備分野で特定技能1号を取得する要件
自動車整備分野で特定技能1号を取得するには、技能水準と日本語能力水準の両方を満たす必要があります。それぞれ、以下の表に掲載した技能評価試験や日本語能力試験への合格が必要です。
人材基準 | 内容(※1) |
技能水準 |
|
日本語能力水準 |
|
ただし、自動車整備分野に関する第2号技能実習を修了した方は、必要な技能水準および日本語能力水準を満たすものとして取り扱われます。そのため、技能実習生を3年程度雇用し、その後1号特定技能外国人へ転換するといったことも可能です(※2)。
※1 国土交通省「自動車整備分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」p3
※2 法務省 出入国在留管理庁「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領」p4
自動車整備分野で特定技能2号を取得する要件
特定技能2号の場合は、技能水準に加えて、一定の実務経験が取得要件となっています。特定技能1号と異なり、日本語能力試験に合格する必要はありません。
自動車整備分野で特定技能2号を取得する要件は、以下の表のとおりです。
人材基準 | 内容(※1) |
技能水準 | 「自動車整備分野特定技能2号評価試験」または「自動車整備士技能検定試験2級」 |
実務経験 | 地方運輸局の認証工場での3年以上の実務経験(※2) |
この場合の実務経験とは、“分解、点検、調整などの整備作業”のことを指し、以下のような例が挙げられます(※2)。
- 道路運送車両法施行規則第3条に規定する特定整備にかかる作業
- 電子制御装置の整備、板金塗装などの特定整備に付随する整備作業
- キャブレータ、インジェクション・ポンプなどの主要な装置の点検、調整に関する整備作業
- 自動車の装置、主要部品などの交換を行う整備作業
- 自動車の装置、主要部品などにかかる点検、調整などの整備作業
- 上記に掲げるものと同等の自動車の点検、調整などの整備作業
また実務経験として認められるのは、道路運送車両法第78条第1項に基づく地方運輸局長の認証を受けた事業場(認証工場)での整備作業に限られます(※1)。
なお、特定技能2号評価試験は2024年7月10日から申し込みが始まっており(※3)、以降は毎日受験することが可能です(3月中はシステム改修のため、一定期間利用不可)。試験の予約や登録内容の確認などは、プロメトリック(PROMETRIC)のホームページから行うことができます。
※1 国土交通省「自動車整備分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」p3
※2 法務省 出入国在留管理庁「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領」p4
※3 国土交通省「国内において「自動車整備分野特定技能2号評価試験」が開始されます!」
特定技能「自動車整備」の外国人材を採用する方法
特定技能「自動車整備」の外国人材を採用するに当たって、受け入れ機関(企業)がすべきことは3つあります。
- 地方運輸局長の認証を受ける(認証工場になる)
- 外国人の支援計画を作成する(1号特定技能外国人のみ)
- 「自動車整備分野特定技能協議会」の構成員になる
地方運輸局長の認証を受ける(認証工場になる)
自動車の分解整備を行うには、道路運送車両法第78条第1項により、管轄の地方運輸局長から認証を受けなければなりません(※)。認証を受けた事業所を「認証工場」と言います。
また認証工場のうち、地方運輸局長から指定自動車整備事業の指定を受けた事業所を「指定工場」と呼びます。働き手として特定技能外国人を受け入れるには、道路運送車両法を守る認証工場または指定工場であることが大前提です。
※ 国土交通省「自動車整備工場には認証工場と指定工場があります。その違いは?」
外国人の支援計画を作成する(1号特定技能外国人のみ)
1号特定技能外国人を受け入れる場合は、外国人が円滑に業務を送れるよう、受け入れ機関が支援計画(1号特定技能外国人支援計画)を作成しなければなりません。
支援計画には、“職業生活上、日常生活上または社会生活上の支援として必要であるとして省令で定められた”以下の10項目が含まれる必要があります(※1)。
- 事前ガイダンス
- 出入国する際の送迎
- 住居確保・生活に必要な契約支援
- 生活オリエンテーション
- 公的手続きなどへの同行
- 日本語学習の機会の提供
- 相談・苦情への対応
- 日本人との交流促進
- 転職支援(人員整理などの場合)
- 定期的な面談・行政機関への通報
受け入れ機関が自ら支援計画を作成することが難しい場合は、登録支援機関に相談するとよいでしょう。ただし、自動車整備分野の場合、以下のすべての条件を満たす登録支援機関に委託しなければなりません(※2)。
- 「自動車整備分野特定技能協議会(協議会)」の構成員であること
- 協議会に対し必要な協力を行うこと
- 国土交通省またはその委託を受けた者が行う調査や指導に対し、必要な協力を行うこと
- 自動車整備士1級もしくは2級の資格を有する者か、自動車整備士の養成施設において5年以上の指導を行った経験を有する者が在籍すること
※1 法務省 出入国在留管理庁「特定技能外国人受け入れる際のポイント」p8
※2 国土交通省「自動車整備分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」p4
「自動車整備分野特定技能協議会」の構成員になる
特定技能制度では、制度の適切な運用を図るため、受け入れ分野ごとに協議会が設置されています。協議会には、構成員となる事業者同士の連携の緊密化や、特定技能外国人の受け入れに関する情報提供・法令遵守の啓発などの役割があります。
自動車整備分野では、国土交通省が設置する「自動車整備分野特定技能協議会」への入会が必要です。入会に当たっての各種届出は、管轄の地方運輸局に送付する必要があります。
特定技能「自動車整備」なら、即戦力となる外国人材を雇用できる
特定技能「自動車整備」は、特定技能制度における外国人材の受け入れ分野の一つです。
特定技能1号・2号という2つの在留資格を通じて、自動車整備分野で一定の専門性や技能を有する外国人材を雇用できます。特定技能2号を取得した方の場合、他の要員の管理業務などに従事してもらうことも可能です。
「若手が育たない」「求人を出しても人手が足りない」といった悩みを抱える自動車整備工場にとって、人手不足の解決策となるでしょう。