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2025.07.23
登録支援機関とは?サポート内容や選び方を詳しく解説

登録支援機関とは、特定技能外国人の受入企業からの委託を受け、特定技能1号外国人が円滑な活動を行えるようサポートする機関のことです。受入企業は雇用した特定技能外国人について、職場や日常生活上の支援を行うことが義務づけられているため、登録支援機関にその支援を代行してもらうケースが増えています。
この記事では、登録支援機関の概要や、特定技能外国人へのサポート内容、登録支援機関に委託すべきケースと委託した場合のメリット、機関を選ぶときのポイントについて解説します。
登録支援機関とは?
登録支援機関とは、特定技能外国人の受入を行っている企業(特定技能所属機関)の依頼を受け、特定技能外国人が仕事や日常生活をスムーズに進められるようサポートする機関です。
特定技能所属機関が登録支援機関を利用するかどうかは任意ですが、特定技能外国人に対する支援を自社だけで対応することは難しいという理由から、多くの企業が登録支援機関を利用しています。実際、出入国在留管理庁が発表しているデータによると、登録支援機関の利用状況は全体の81.1%にも上っています(※)。
※ 出入国管理庁「令和2年度 外国人材受入れ支援体制の強化事業 事業報告書」p41
登録支援機関の要件
出入国在留管理庁によると、登録支援機関は登録に際し以下の要件を満たしている必要があります(※)。
- 支援責任者および1名以上の支援担当者を選任していること
- 以下いずれかに該当すること
・登録支援機関になろうとする者が、2年以内に中長期在留者(就労資格に限る)の受入実績があること
・登録支援機関になろうとする者が、2年以内に報酬を得る目的で、外国人に関する各種相談業務に従事した経験があること
・選出された支援責任者および支援担当者が、過去5年間に2年以上中長期在留者の生活相談業務に従事した経験があること
・その他、登録支援機関になろうとする者が、上記と同程度に支援業務を適性に実施できると認められていること - 外国人が十分理解できる言語で、情報提供等の支援を行える体制を整えていること
- 1年以内に過失事由により、特定技能外国人または技能実習生の行方不明者を発生させていないこと
- 支援の費用を直接または間接的に外国人本人に負担させないこと
- 5年以内に出入国または労働に関する法令に関して不正または著しく不当な行為を行っていないこと
以上のような要件を満たしていない場合、申請しても審査を通過できない決まりになっています。
※ 出入国管理庁「在留資格『特定技能』が創設されました」p2
特定技能外国人へのサポート内容
登録支援機関を利用した場合、受け入れた特定技能外国人に対し、以下のようなサポートが行われます。
事前ガイダンス
特定技能外国人が受入機関と雇用契約を締結した後、在留資格認定証明書または在留資格変更許可を申請する前に、必要な説明を行う支援です。
具体的には、次のような内容について、特定技能外国人が理解できる言語で説明します。
- 雇用形態
- 業務内容
- 就業場所
- 給与
- 特定技能で行える業務範囲
- 入国や在留資格変更にあたり必要となる手続き
なお、支援機関によっては日本の気候に適した服装や、本国から持ち込み可能なものと不可のもの、当面必要となる諸経費などについて説明する支援を行っているところもあります。
出入国する際の送迎
新規入国する特定技能外国人を送迎する支援です。入国時は空港と受入機関または居住地への送迎、帰国時は受入機関または居住地から空港の保安検査場までの送迎・同行を行います。
住居確保・生活に必要な契約支援
特定技能外国人が住む場所や、日常生活を送る上で必要な支援を行います。例えば、アパートやマンション等の賃貸契約を締結する際の連帯保証人になる、社宅を提供する、銀行口座の開設や携帯電話の契約のお手伝いをするなどのサポートを実施します。
生活オリエンテーション
生活オリエンテーションとは、特定技能外国人が日本でトラブルを起こすことなく、安定した生活を送れるよう支援するものです。生活一般に関するルールやマナーなどについて説明する他、公的機関の手続きや医療、防災・防犯、法令などに関する情報を提供します。
公的手続きへの同行
特定技能外国人が日本で不便なく生活できるよう、必要な公的手続きに同行・補助する支援です。例えば、住所の届出や社会保障・税に関する手続き、マイナンバーカードの申請手続き、自転車の防犯登録などについて、所定の窓口まで同行し、必要に応じてアドバイスやサポートを実施します。
日本語学習の機会の提供
特定技能外国人が職場や日常生活で円滑なコミュニケーションを行えるよう、日本語学習を受ける機会を設けます。具体的には、近場の日本語教室や日本語教育機関を案内したり、自主学習に利用する教材に関する情報を提供したり、受入企業が契約した日本語教師による語学講習を実施したりします。
相談・苦情への対応
特定技能外国人が職場や日常生活に関して悩みや不安を抱いたとき、相談や苦情を受け付け、必要な助言や指導を行います。悩みの内容によっては、地方出入国在留管理局や労働基準監督署などを案内し、より専門的なアドバイスや支援を受けることを促します。
日本人との交流促進
特定技能外国人が日本人と交流できる機会や場についての情報を提供し、円滑なコミュニケーションを図れるよう支援します。ただ情報を提供するだけでなく、イベントや行事に参加するための手続きをサポートしたり、必要に応じて交流の場に同行したりする場合もあります。
転職支援(受入側の都合によるもの)
人員整理など、受入側の都合によって特定技能外国人の雇用契約を解除しなければならなくなった場合、転職先を探す支援を行います。具体的には、求人情報の提供や職業紹介事業者の紹介、推薦状の作成、転職活動のための有給休暇の付与やシフト調整などを行います。
定期的な面談・行政機関への通報
支援責任者が特定技能外国人およびその上司等と面談し、労働状況や生活状況を調査します。その結果、労働基準法違反などが発覚した場合は、然るべき行政機関への通報を行い、特定技能外国人の立場を保護します。なお、面談の頻度は3カ月に1回以上です。
登録支援機関へ委託すべきケース
前述した通り、受入機関が登録支援機関に特定技能外国人の支援を委託するかどうかは任意ですが、以下のようなケースでは支援機関へ委託した方がよいでしょう。
支援の要件を満たしていない場合
1号特定技能外国人の受入企業は、特定技能1号としての活動を安定かつ円滑に行えるよう、職業や日常生活、社会生活上の支援についての計画(支援計画)を作成し、これを実行することが義務づけられています。
支援計画の作成および支援の実行に当たっては、以下の基準を満たしている必要があります(※)。
- 以下いずれかに該当すること
・過去2年間に中長期在留者(就労資格に限る)の受入または管理を適性に行った実績があり、役職員の中から事業所ごとに1名以上の支援責任者および支援担当者を選任していること
・過去2年間に中長期在留者(就労資格に限る)の生活相談等に従事した経験がある役職員の中から事業所ごとに1名以上の支援責任者および支援担当者を選任していること
・上記2つと同程度の支援業務を適性に実施できる役職員の中から、事業所ごとに1名以上の支援責任者および支援担当者を選任していること - 外国人が十分に理解できる言語で支援を実施できる体制を整えていること
- 支援状況に係る文書を作成し、雇用契約終了日から1年以上保管すること
- 支援責任者および支援担当者が支援計画を中立に実施でき、かつ欠格事由に該当しない人物であること
- 5年以内に支援計画に基づく支援を怠っていないこと
- 支援責任者または支援担当者が外国人やその監督者と定期的に面談できる体制を整えていること
- 分野に特有の基準に適合すること
上記の要件に該当していない受入機関は、特定技能外国人に対して十分な支援を行えない可能性があると見なされるため、登録支援機関への委託が必要になります。
特に、初めて1号特定技能外国人の受入を行う企業は上記の要件を満たせない可能性が高いため、登録支援機関に頼ることになるでしょう。
※ 出入国在留管理庁「特定技能外国人受入る際のポイント」p16
自社の負担を軽減したい場合
1号特定技能外国人への支援内容は、受入前の事前ガイダンスから、受入後の業務上・日常生活上のサポートまで多岐にわたります。これらの支援を自社で行う場合、日常の業務負担が大幅に増加することは避けられません。
特に1号特定技能外国人の受入を行っている企業は、総じて人手不足に悩まされているケースが多く、外国人の支援を担当できる人材を確保するのは困難です。その結果、既存従業員へのしわ寄せが大きくなるという新たな問題が浮上するリスクがあります。
このような問題を解消したいのなら、登録支援機関を利用し、自社への負担を軽減した方がよいでしょう。
リスクを回避したい場合
1号特定技能外国人に対する支援が義務づけられている理由の一つに、トラブルやリスクの防止が挙げられます。
特定技能外国人に対し、業務や日常生活について適切な支援を行わないと、日本人従業員との間で連携ミスが発生したり、生活ルールやマナーの違いによる苦情が相次いだり、雇用条件の不満から早期離職されたりする可能性が高くなるからです。
支援体制がしっかりしているほど、上記のようなトラブルの発生を低減しやすくなるので、リスクを未然に回避したいのなら、支援体制が整っている登録支援機関を利用するのがおすすめです。
登録支援機関へ委託するメリット
登録支援機関を利用すると、以下のようなメリットを期待できます。
自社の負担を軽減できる
登録支援機関には、受入機関が行うべき支援の一部または全てを委託することが可能です。支援の全てを委託すれば、1号特定技能外国人へのサポート負担を軽減できるため、自社の業務に専念できます。
早期離職を防止できる
1号特定技能外国人への支援が不十分だと、労働環境への不満や生活になじめないストレスなどから、外国人が早期離職してしまうリスクが高くなります。支援体制が整った登録支援機関に委託すれば、必要十分なサポートを受けられるため、特定技能外国人の定着率アップが期待できるでしょう。
登録支援機関を選ぶときのポイント
登録支援機関は全国に点在しており、それぞれ実績や特徴に違いがあります。より充実した支援を期待できるよう、登録支援機関を選ぶときは以下のポイントをチェックしましょう。
登録の有無をチェック
登録支援機関として活動できるのは、申請手続きを行い、所定の審査を経て国から認定を受けた機関のみです。それ以外の機関に委託すると、支援体制の要件を満たしていないと見なされ、場合によっては受入機関の認可を解除されてしまう可能性があります。
登録を受けた支援機関は、出入国在留管理庁のホームページで公開されている登録支援機関登録簿で確認できるので、その中から委託先を選びましょう。
実績をチェック
登録支援機関は、一定以上の支援経験を有する者あるいはそれと同程度の支援業務を実施できる能力を有する者が支援責任者および支援担当者として在籍していることが前提条件となっています。
ただし、実際の経験や実績の程度は機関によってまちまちです。支援実績が豊富な機関ほど、1号特定技能外国人に対する支援のノウハウや知識に長けていると判断できるため、質の高いサービスを期待できるでしょう。支援実績は各機関のホームページなどで公開されているので、事前にチェックすることをおすすめします。
費用をチェック
登録支援機関に委託すると、1号特定技能外国人1人につき所定の委託費用が発生します。委託費用の相場は1人あたり平均約11万9,000円ですが、委託する支援の内容によって差が生じるのはもちろん、同じ支援内容でも委託した機関によって費用が異なります(※)。
委託費用をなるべく節約したいのなら、複数の機関から同じ条件で見積もりを取って比較検討しましょう。
※ 出入国管理庁「令和2年度 外国人材受入れ支援体制の強化事業 事業報告書」p125
1号特定技能外国人を受け入れる際は登録支援機関を上手に利用しよう
1号特定技能外国人の受入機関には、外国人が1号特定技能の活動を安定的かつ円滑に行えるように支援する義務があります。支援体制は一定の要件を満たす必要がある他、業務から日常生活まで幅広いサポートが必要です。支援体制の要件を満たさない場合や、自社の負担を軽減したい場合は、登録支援機関への委託を検討しましょう。
機関を選ぶ際は、きちんと登録を受けているか、実績は豊富か、費用は適切か、などを確認することが大切です。