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2025.01.15

特定技能と技能実習の違いは?6つのポイントで徹底解説

外国人材の受け入れに当たって、特定技能と技能実習のどちらを利用すべきか迷っている方も多いでしょう。

特定技能は、2019年に創設された新しい在留資格です。一方の技能実習は、1993年に技能実習制度が始まり、2010年に在留資格「技能実習」が創設されたという経緯があります(※1)。

受け入れ企業の目線で見ると、特定技能と技能実習にはそれぞれ一長一短があります。2024年6月の入管法等改正により、今後3年以内に「技能実習」が「育成就労」に変わるという点も視野に入れつつ、自社に合った受け入れ方法を選びましょう(※2)。

この記事では、特定技能と技能実習の違いや、それぞれのメリット・デメリット、技能実習から特定技能へ移行する方法について解説します。

※1 法務省 出入国在留管理庁「技能実習制度及び特定技能制度の現状について」p8

※2 法務省 出入国在留管理庁「令和6年入管法等改正法について」

 

 

特定技能と技能実習の違いを6つのポイントで解説

特定技能と技能実習は、制度上趣旨が異なる在留資格です。例えば、出入国在留管理庁が作成したQ&Aでは、特定技能と技能実習の違いについて以下のとおり説明しています(※1)。

  • 特定技能制度は、深刻な人手不足に対応するため、特定の産業上の分野において、一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人材を受け入れるものです。
  • 他方、技能実習制度は、人材育成を通じた開発途上地域などへの技能、技術または知識の移転を図り、国際協力を推進することを目的とする制度です。

こうした制度上の違いの他にも、受け入れ企業が知っておくべき点は数多くあります(※2)。

項目 特定技能(1号) 技能実習(団体監理型)
制度目的 深刻化する人手不足への対応として、生産性の向上や国内人材の確保のための取り組みを行ってもなお、人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野に限り、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れるもの 国際貢献のため、開発途上国などの外国人を受け入れ、OJTを通じて技能を移転するもの
在留資格 在留資格「特定技能」 在留資格「技能実習」
在留期間 通算5年
(特定技能2号は上限なし)
  • 技能実習1号:1年以内
  • 技能実習2号:2年以内
  • 技能実習3号:2年以内
    (合計で最長5年)
技能水準 相当程度の知識または経験が必要 なし
入国時の試験 技能水準、日本語能力水準を試験などで確認
(技能実習2号を良好な成績で修了した者は試験免除)
なし
(介護職種のみ、入国時にN4レベルの日本語能力要件あり)
支援の有無 受け入れ機関または登録支援機関による支援の対象
(特定技能2号は支援の対象外)(※3)
なし
受け入れ機関の人数制限 人数制限なし
(介護分野、建設分野を除く)
常勤職員の総数に応じた人数制限あり
業務内容 相当程度の知識または技能を要する業務に従事する
(専門的・技術的分野)
技能実習計画に基づいて業務に従事する
(非専門的・技術的分野)
転籍・転職 同一の業務区分内か、または試験によりその技能水準の共通性が確認されている業務区分間において転職可能 原則不可。ただし、企業の倒産などやむを得ない場合や、2号から3号への移行時は転籍可能
(2024年6月の法改正により、制限緩和の方針)(※4)
家族の帯同 不可(特定技能2号は、要件を満たせば配偶者・子のみ可) 不可

 

ここでは、特定技能と技能実習の違いを6つのポイントで分かりやすく解説します。

※1 法務省 出入国在留管理庁「特定技能ガイドブック~特定技能外国人の雇用を考えている事業者の方へ~」p34

※2 法務省 出入国在留管理庁「技能実習制度及び特定技能制度の現状について」p9

※3 法務省 出入国在留管理庁「技能実習制度及び特定技能制度の現状について」p40

※4 法務省 出入国在留管理庁「改正法の概要(育成就労制度の創設等)」p1

 

在留できる期間の違い

特定技能と技能実習は、在留できる期間が異なります。

技能実習の場合、在留期間は技能実習1号が1年、技能実習2号と技能実習3号がそれぞれ2年(合計で最長5年)です。

一方、特定技能の場合、特定技能1号の在留資格のみで通算5年在留できます。ただし、在留資格は1年、6カ月または4カ月ごとに更新する必要があります(※)。

また特定技能2号を取得した方は、在留期間の上限がありません。在留資格を更新しつづける限り、無制限に在留可能です。

 

求められる技能水準の違い

特定技能と技能実習では、求められる技能水準も違います。

技能実習の場合、どの職種においても技能やスキルは求められません。また入国時の技能試験もありません。

一方、特定技能の場合、特定技能1号では「相当程度の知識または経験」、特定技能2号では「熟練した技能」が求められます。

また在留資格の取得には、受け入れ分野に対応した技能試験を受験しなければなりません。例えば、介護分野は「介護技能評価試験」、建設分野は「建設分野特定技能評価試験」への合格が必要です。

 

求められる日本語能力水準の違い

技能水準と同様に、求められる日本語能力水準も違います。

技能実習の場合、特定の職種を除いて、就労開始時に日本語能力は求められません。介護職種のみ、日本語能力試験(JLPT)のN4レベルに相当する日本語能力要件があります。

特定技能1号においても、N4レベル以上の日本語能力試験か、国際交流基金日本語基礎テストへの合格が必要です。介護分野では、上記に加えて「介護日本語評価試験」を受験しなければなりません。

一方、特定技能2号では、日本語能力水準について試験などでの確認は行われません。

なお、日本語能力試験のN4レベルとは、「基本的な日本語を理解することができる」レベルを指します(※)。

  • 基本的な語彙や漢字を使って、日常生活における身近な話題の文章を理解できる
  • 日常的な場面で、ややゆっくりと話される会話の内容をほぼ理解できる

国際交流基金/財団法人 日本国際教育支援協会「N1~N5:認定の目安」

 

受け入れ機関の人数制限の違い

技能実習制度では、受け入れ機関の常勤職員の総数に応じて、技能実習生の人数枠が定められています(※1)。

常勤職員の総数 技能実習生の人数
301人以上 常勤職員の20分の1まで
201人~300人 15人
101人~200人 10人
51人~100人 6人
41人~50人 5人
31人~40人 4人
30人以下 3人

 

一方、特定技能の場合、企業ごとの受け入れ人数の上限は原則としてありません。ただし、介護および建設分野では、常勤職員の総数を超えて1号特定技能外国人を受け入れることはできません(※2)(※3)。

受け入れ分野 人数制限
介護 事業所単位で日本人などの常勤の介護職員の総数を超えないこと
※以下の外国人材は「常勤の介護職員」に含まれる
  1. 介護福祉士国家試験に合格したEPA介護福祉士
  2. 在留資格「介護」により在留する者
  3. 永住者や日本人の配偶者など、身分・地位に基づく在留資格により在留する者
建設 常勤の職員(技能実習生および1号特定技能外国人を除く)の総数を超えないこと

 

※1 法務省 出入国在留管理庁「技能実習制度及び特定技能制度の現状について」p21

※2 法務省 出入国在留管理庁「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領-介護分野の基準について-」p10

※3 法務省 出入国在留管理庁「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領-建設分野の基準について-」p14

 

従事できる業務の違い

特定技能と技能実習の違いは?6つのポイントで徹底解説_解説イラスト

技能実習制度では、外国人材を91職種167作業(2024年9月30日時点)に従事させることが可能です(※1)。ただし、技能実習はOJTによる技術移転を目的とした制度であるため、単純労働をさせることはできません。

  • 農業・林業関係(3職種7作業)
  • 漁業関係(2職種10作業)
  • 建設関係(22職種33作業)
  • 食品製造関係(11職種19作業)
  • 繊維・衣服関係(13職種22作業)
  • 機械・金属関係(17職種34作業)
  • その他(21職種38作業)
  • 社内検定型の職種・作業(2職種4作業)

一方、特定技能制度では主たる業務に加えて、関連性の高い単純労働にも従事させることが可能です。

また受け入れ分野は2024年3月29日の閣議決定により、従来の12分野から16分野に拡大されています(※2)。

既存の分野 介護、ビルクリーニング、建設、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、外食業、工業製品製造業、造船・舶用工業、飲食料品製造業
新規分野 自動車運送業、鉄道、林業、木材産業

 

業務内容の具体例は、出入国在留管理庁が作成したJob Descriptionで確認できます。

※1 法務省 出入国在留管理庁「外国人技能実習制度について」p8

※2 法務省 出入国在留管理庁「特定技能制度の概要について」p11

 

家族の帯同の可否の違い

技能実習および特定技能1号の在留資格では、入国時に家族を帯同することはできません。

ただし、特定技能2号の場合、一定の要件を満たせば配偶者、子の帯同が認められます。

 

特定技能制度を利用するメリット・デメリット

特定技能制度を利用するメリット・デメリットは以下のとおりです。

メリット
  • 介護・建設分野以外は受け入れ人数の制限がなく、必要な人数だけ採用できる
  • 国内在住者も採用可能なため、就労開始までに時間がかからない
  • 一定の技能水準や日本語能力水準を求められるため、即戦力として働ける人材を確保できる
  • 技能実習制度と比較すると、採用にかかるコストが少ない
  • 職場の日本人が従事する単純労働にも、付随的に従事させることが可能
デメリット
  • 就労開始後も転職が可能なため、人材を定着させるための施策が必要
  • 同じ業務に従事する日本人と同等の労働条件を提示する必要がある
  • 民間の職業紹介機関や、出入国在留管理庁のマッチングイベントなどを通じて、自分で人材を募集する必要がある
  • 受け入れに当たって、各分野の協議会に加入する必要がある

 

技能実習制度を利用するメリット・デメリット

技能実習制度を利用するメリット・デメリットは以下のとおりです。

メリット
  • 転職(転籍)の条件が厳しいため、長期的な関係構築が可能
  • 送出機関を通じて人材を確保できるため、採用の手間がかからない
  • 技能実習中は地域別の最低賃金で雇用可能
デメリット
  • 技能水準や日本語能力水準の要件がないため、人材育成の手間やコストがかかる
  • 外国の送出機関から呼び寄せる必要があるため、就労開始までに時間がかかる
  • 監理団体への管理費用の支払いなど、受け入れ後もコストが発生する
  • 技能実習日誌の作成など、受け入れ後の事務手続きに手間がかかる
  • 技能実習生は業務内容に制限があり、単純労働に従事させることができない

 

技能実習から特定技能へ移行できる?

技能実習(2号・3号)を良好な成績で修了した方は、在留資格を特定技能1号に変更することが可能です。

良好な成績とは、技能実習を2年10月以上修了しており、かつ以下のいずれかの要件を満たすことを意味します(※)。

  • 技能検定3級またはこれに相当する技能実習評価試験に合格している
  • 技能実習生に関する評価調書がある
    ※評価調書の提出を省略できる場合もあります。

特定技能1号への移行に当たって、技能試験や日本語能力試験は免除されます。

ただし、技能実習生として活動中の方が、実習計画を中断して特定技能に資格を変更することはできません。また航空分野の場合、対応する技能実習2号の職種・作業がないという点も知っておくとよいでしょう。

法務省 出入国在留管理庁「特定技能ガイドブック~特定技能外国人の雇用を考えている事業者の方へ~」p35

 

特定技能と技能実習のどちらを利用すべき?

ヘルメットを被っている男性

特定技能と技能実習のどちらを利用するか迷ったら、従事してもらう予定の業務内容によって判断しましょう。特定技能も技能実習も、対象となる分野または職種以外で外国人材を受け入れることはできないからです。

両方の制度で受け入れ可能な業務の場合は、以下の点に基づいて判断するとよいでしょう。

判断のポイント 特定技能 技能実習
単純労働に従事させたい 主たる業務に付随する形で、単純労働にも従事させられる 単純労働への従事は不可
多くの外国人材を受け入れたい 介護・建設分野を除き、受け入れ人数の制限がない 常勤職員の総数に基づく人数制限あり
即戦力となる外国人材を採用したい 技能試験への合格が必要なため、一定以上の技能やスキルが担保される 技能水準は要求されない
円滑にコミュニケーションが取れる外国人材を採用したい 国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験(N4以上)への合格が必要なため、日常会話レベルの意思疎通が可能 介護職種を除き、日本語能力水準は要求されない

 

また技能実習制度は、今後廃止に向かっているという点も知っておく必要があります。

2024年6月21日に公布された「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律」では、これまでの技能実習制度を抜本的に見直し、育成就労制度が新たに導入されました(※1)。

育成就労制度は、技能移転による国際貢献を目的とした技能実習制度と異なり、人手不足分野における人材の育成・確保を目的とした制度です。特定技能1号へ移行しやすくなる(試験不合格となっても、最長1年の在留継続が可能)とともに、外国人労働者の権利保護の観点から、本人の意向による転籍などの制限が緩和されます(※2)。

育成就労制度は、2024年6月21日から起算して3年以内にスタートする予定です(※1)。技能実習制度が今後廃止されるという点も視野に入れつつ、自社に合った受け入れ方法を選びましょう。

※1 法務省 出入国在留管理庁「育成就労制度の概要」p1

※2 法務省 出入国在留管理庁「育成就労制度の概要」p2

 

特定技能と技能実習の違いを知り、自社に合った受け入れ方法を選ぼう

特定技能と技能実習は、在留期間や受け入れ人数、求められる技能水準・日本語能力水準、従事できる業務内容など、さまざまな点で違いがあります。

それぞれのメリット・デメリットを比較し、外国人材の受け入れ方法を選択しましょう。技能実習から特定技能への移行も可能なため、技能実習が終わっても在留期間を延長することは可能です。

技能実習制度は今後廃止が予定されています。新たにスタートする育成就労制度についても調べておきましょう。

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