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2021.06.24
技能実習生を受け入れるまでの流れとは?手続きや条件、費用を解説
技能実習生を受け入れるまでの流れとは?手続きや条件、費用を解説
技能実習制度は、開発途上国支援の国際貢献の一環として平成5年に創設されました。最長5年間に限って開発途上国の外国人を受け入れ、OJT(オンザジョブトレーニング)によって日本の高い技能や技術を移転し、帰国後にその技術などを通じて、開発途上国の発展などへ貢献することが目的です。従って労働力を補うための制度ではないことを十分にご理解ください。令和元年(2020年)3月末時点で、日本全国に36万人以上の技能実習生が在留しています。
技能実習生を受け入れるまでの流れ
技能実習生を受け入れるまでには様々な手続きが必要です。以下、主なステップを整理してみます。
- 実習職種、人数、送り出し国などを検討し、受け入れ計画を決定します。
- 送り出し国の技能実習生送り出し機関へ求人を依頼します。候補者が集まり次第、面接を行い採用を決定します。
- 技能実習計画を作成し、外国人技能実習機構(地方事務所)へ技能実習計画認定申請を行います。
- 技能実習計画が認定された場合は技能実習計画認定通知書が交付され、その結果は外国人技能実習機構本部から厚労省、法務省(出入国管理庁)へ報告されます。
- 必要書類を作成・入手し、法務省(出入国管理庁)へ在留資格認定証明書交付申請を行います。書類などに不備が無ければ在留資格認定証明書が交付されます。
- 在留資格認定証明書と他の必要書類などを添えて、在送り出し国日本大使館などへ査証(ビザ)申請を行います。通常1週間程度で発給されます。
- 航空券(フライトチケット)を購入し、具体的な入国日が決定されます。
- 入国後は通常1か月間の入国後講習を受けた後に、実習実施者(企業)へ配属されます。
*上記3~5までのプロセスで通常4~5か月程度、初めて技能実習生を受け入れる場合は、技能実習計画認定審査に更に1カ月程度が必要です。
その他、受け入れにあたって必要な知識をいくつか補足します。
受け入れには2つの方式がある
技能実習生の受け入れには2つの方式があります。ひとつは「団体監理型」で、非営利の協同組合や商工会などの監理団体が技能実習生の受入を行い、加盟企業が実習実施者となり技能実習を行います。もうひとつは「企業単独型」で、実習実施者の海外現地法人や合弁企業、取引先企業の職員を技能実習として受け入れる方式です。
公益財団法人 国際人材協力機構の資料によると2018年の時点で団体監理型受入が97.2%、企業単独型受入が2.8%と、技能実習生のほとんどが団体監理型と言えますので、以下では主に団体監理型について解説していきます。
受け入れ可能な人数について確認する
実習実施者が一度に受け入れられる技能実習生数には上限があり、常勤職員数や技能実習生の区分(技能実習1年目は1号、2~3年目は2号、4~5年目は3号)、優良基準適合者か否かによって変わります。(特有の事情のある介護職種などについては、事業所管大臣が定める人数になります。)
常勤職員数が30人以下の企業を例にすると、初めて1号生を受け入れる場合の基本人数枠は3人となります。しかし、「技能実習生数は常勤職員数を超えてはいけない」ルールがあるため、もしこの企業の常勤職員数が1人または2人の場合は、技能実習生の受け入れ上限も1人または2人となります。
受け入れ可能な職種について確認する
現在の制度(2021年3月時点)では83職種151作業が移行対象職種として定められています。移行対象職種とは1号技能実習から2号、更に7職種1作業以外は3号への移行が可能な職種です。(作業とは同職種の中でも使用する機器や現場、製品の違いなどによって職種を細かく区別したものです。)
制度の運用要項や目的に適合していれば、1号のみの技能実習(1年以内の実習期間)が認められる場合もあります。
参考:技能実習生の受入対象職種
監理団体と契約する
団体監理型で技能実習生を受け入れる場合に、まず必要となるのが監理団体と呼ばれるパートナーを選ぶことです。監理団体とは、技能実習生を受入れ、その活動及び受入企業へのサポート等を行う非営利団体です。技能実習生が母国にいる時から実習期間を終えて帰国するまでの間、彼らが安心して技能実習が行えるよう、また実習実施者が不安なく技能実習生を受け入れられるようにサポートを行ってくれます。技能実習生の受け入れを検討する場合は、まずは監理団体へのお問い合わせ、相談が必須でしょう。
監理団体の役割
監理団体は技能実習生の受け入れを検討している、または既に受け入れている企業へのアドバイスや支援をはじめ、実際に技能実習生の募集や受け入れ手続きなども行います。また、技能実習生が日本での実習や日常生活に支障が生じないようにサポートやケアを行ったり、実習実施者との橋渡しを行う機関です。
監理団体選定時のポイント
監理団体は技能実習生の受け入れに欠かせない存在ですが、事業の成功のためには自社にあった監理団体を選び出す必要があります。ここではそのポイントを挙げます。
- 許可区分:監理団体には一般監理事業許可と特定監理事業許可の2種類の区分があり、一般監理事業許可は1号、2号、3号の技能実習生の受け入れを行えますが、特定監理事業許可は1号と2号のみです。どの監理団体も特定監理事業許可から始めますが、実績や期間に応じて一般監理事業許可を得ることができます。
- 対応可能な地域、職種、送り出し国:監理団体は定期的に企業へ訪問する必要がありますので、対応可能地域は非常に重要です。また監理実績の多い職種や、採用希望の国からの受け入れの可否もポイントです。
その他、詳しい情報は下記の記事も御覧ください。
募集人数を決め、採用を進める
採用を進めるために、募集人員を決め、手続きを進めましょう。以下、具体的なステップです。
- 採用計画:監理団体と相談しながら、「どの職種で」「いつ頃」「何人」「どこの国から」採用するかを検討します。特に、何年かに渡って定期的に採用する予定があれば、監理団体からアドバイス等を受けながら慎重に検討する必要があります。
- 求人:監理団体を通じて、採用希望国の送り出し機関へ求人を行います。採用にあたり、重要視する技術や資質、身体要件、性別などを明確にすることが大切です
- 面接:送り出し機関は、通常1カ月程度で採用条件にマッチした候補者を選定し面接の準備を行います。現在は世界的なコロナ禍により、候補者に直接会って面接することは難しくなっているため、Web面接が主流となっています。また、計画している実習内容との適性を図るために、実技テストやペーパーテスト、体力テストなどを行うことも可能です。
- 採用決定:採用要件にもよりますが、多くの送り出し機関は採用予定人数の2~3倍程度の候補者を推薦します(例えば、採用予定が5名の場合は10~15名程度)。監理団体とも相談しながら、実習内容に適合していると思われる候補者を選抜します。
必要書類などの作成や手続きを進める
技能実習生の受け入れには様々な書類を提出し、手続きを行う必要があります。主な手続きは以下の通りです。
- 外国人実習機構(OTIO)へ技能実習計画認定申請を行う。
- 出入国管理庁へ在留資格認定証明書交付申請を行う。
- 在送り出し国日本大使館などへ査証(ビザ)申請を行う。
技能実習計画認定申請
技能実習計画認定申請を行うためには多数の必要書類等があります。技能実習生の区分や初回の受け入れか否かなどによっても異なりますし、もちろん、実習実施者が全てを準備する訳ではありませんのでご安心ください。この必要書類の中で実習実施者が作成しなくてはならない、最も重要なものが技能実習計画です。
これは技能実習生へ、「どのような技術や作業を」「誰が」「どのくらいの期間で」「どのような目標を持って技術移転するか」を記述するものです。この一文だけでは複雑でややこしそうに見えますが、監理団体の協力やアドバイスがあれば難しいものではありません。
実習実施者、監理団体、送り出し機関の三者で準備した書類が揃ったら、外国人実習機構(OTIO)へ技能実習計画認定申請を行います。
在留資格証明書申請を行う
外国人実習機構から技能実習計画認定通知書が発行されましたら、その写しなどを添えて、出入国管理庁へ在留資格認定証明書交付申請を行います。通常、この申請は監理団体が行います。
在留資格認定証明書をひとことで表すと、外国人が日本に入国してもよいことを証明する文書です。
日本に短期滞在以外の在留資格で上陸しようとする外国人は、日本国内で行おうとしている活動(今回の場合は技能実習)と、申請された在留資格が適合しているかが審査されます。その結果、適合していると認定された場合は在留資格認定証明書が交付されます。
また、有効期間が3か月間しかありませんので、交付後は早めに技能実習生の入国が必要です。ただし、コロナ禍の影響で入国制限などの措置がなされた場合は、有効期間が延長される場合があります。
査証発給申請を行う
査証(ビザ)の発給を受けるには、在留資格認定証明書の原本と写しに技能実習生本人のパスポートなどを添えて、在送り出し国大使館や領事館へ申請を行います。送り出し国で発給を受ける必要がありますので、この申請は送り出し機関にて行うことがほとんどです。通常は5営業日(1週間程度)で発給されます。
技能実習生の受け入れ準備をする
最後に、技能実習生を受け入れるために、企業側での受け入れ準備を進めましょう。
技能実習責任者を選任する
実習実施者ごとに技能実習責任者等講習の修了者を技能実習責任者として選任しなくてはなりません。後述する技能実習指導員や生活指導員をはじめ、技能実習にかかわる社員の監督指導や実習計画の進捗確認など、技能実習全体にわたっての管理などを行います。
技能実習指導員を選任する
技能実習生を受け入れる場合は、実習指導員を必ず1名以上選任しなくてはなりません。実習指導員の条件は5年以上の実務経験がある常勤の職員です。実習生は実習指導員から直接指導を受けながら実習等を進めて行きますので、非常に重要な役割です。
生活指導員を選任する
生活指導員も必ず1名以上を常勤役職員より選任しなくてはなりません。生活指導員は実習生の身の回りの世話や相談窓口となり、生活をサポートします。実習生は慣れない日本での生活でストレスが溜まりやすく、ホームシックになることも考えられます。また、文化の相違によって日常生活で困りごとが出ると業務に支障が出る場合もありますので、生活指導員は面倒見のいい人が適任でしょう。
社会保険などに加入する
入国後の研修を修了した技能実習生は、日本人労働者と同じく労働基準法やその他関連法が適用されますので、労働保険(労災保険・雇用保険)や社会保険(健康保険、厚生年金、介護保険)への加入は必須です。年金に関しては、帰国時に条件を満たせば「脱退一時金」として請求できます。日本の社会保障制度は充実している反面、実習生にとって負担が大きく、わかり難いものです。言葉や制度の違いを理解した上で十分に説明できるように準備しましょう。
住居や生活必需品を用意する
住居の規定では1人あたり4.5m2以上のスペースと決められていますが、出来る限り余裕のあるスペースを確保し、心身の疲れが癒され、気持ちが落ち着く場所にしましょう。湯船につかる習慣のない国が多いので、シャワーは必ず必要です。また一年の寒暖差が少なく、比較的暖かい地域から来る実習生が多い事を考慮して、エアコン備え付けの物件が望ましいです。
また、生活必需品は日本人が一人暮らしする場合と変わりありませんが、全てを新品で買い揃える必要はなく、中古であっても不便なく使えれば問題ありません。また、生活必需品の全て用意しないと受け入れできない訳ではありませんが、地域性等も考慮して実習生ができるだけ快適に過ごせるような配慮が必要です。
受け入れにかかる費用
技能実習生の受け入れに必要な費用は、初期費用、入国前費用、入国後費用、実習開始後費用の4つに大別されます。それぞれで必要な費用を解説していきます。
① 初期費用:10~20万円程度
1. 監理団体への加入金
2. 渡航費(実際に送り出し国へ渡航して面接などを行う場合) など
*その他にJITCO(公益財団法人 国際人材協力機構)への加入金が必要な場合があります。
② 入国前費用:20~30万円程度
1. 母国での講習実施費用
2. 在留資格認定申請・取次費用
3. 入国時の渡航費 など
③ 入国後費用:15~20万円程度
1. 技能実習生総合保険
2. 雇入れ前健康診断費用
3. 国内講習費
4. 国内講習手当 など
④ 実習開始後費用:ケースバイケース
1. 監理団体の監理費
2. 送り出し機関管理費
3. 満期帰国及び3号移行後の一時帰国渡航費
4. 技能検定料
5. 在留資格変更、更新申請、取次費用 など
この他、技能実習生へ給与の支払いもあります。
まとめ
この記事では技能実習生を受け入れるまでの流れと手続きや条件、費用を解説しました。技能実習生を受け入れるためには、様々な準備が必要になること、おわかりいただけたと思います。特に初めての受け入れの場合は不安も大きいと思いますので、安心できる監理団体をパートナーとして迎え、アドバイスや協力を受けることが必須でしょう。
技能実習生の受け入れについてご不明点がありましたら、「無料相談」よりお問い合わせください。