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2021.10.24
監理団体とは?技能実習制度における役割や選び方のポイントを解説
監理団体とは?技能実習制度における役割や選び方のポイントを解説
ここでは、監理団体がどのような団体であるのか、その種類や団体として活動するために必要な要件などを解説していきます。外国人技能実習制度において、技能実習生の保護は大切なテーマとなっています。それを加味した上で監理団体が担う様々な役割や、実際に受け入れ企業に代わってどんな業務を行っているのかを見ていきましょう。さらに、企業が監理団体を選ぶ際に役立つポイントもご紹介します。
監理団体とは?
監理団体とは、技能実習制度で定められた監理事業を行う非営利団体です。その主な活動内容の一つに、日本の企業が海外から来日する技能実習生を受け入れる際のサポート業務があります。現地での技能実習生の募集手配(募集自体は現地の送り出し機関が行います)から、面接、入国手続き等の具体的な受け入れまで一連の手順をサポートしています。このため、海外に支店を持たない企業でも技能実習生の受け入れがしやすくなると言えるでしょう。
さらにもう一つ重要な役割として、外国人技能実習制度に基づいて、受け入れ後に企業で適正な実習が遂行されているか監理業務があります。
実際の受け入れはどのようになっているのでしょうか。実習生の受け入れには、「企業単独型」と「団体監理型」の2つのタイプがあります。
「企業単独型」とは、日本の企業が海外の現地法人や合弁企業、取引先企業の常勤職員を直接受け入れるものであり、「団体監理型」は、監理団体が研修生・実習生を受入れ、傘下の中小企業(受入れ企業)で技能実習を実施します。
このように、「企業単独型」は「団体監理型」と違い、企業が現地での募集から一切の行程を自社で行わなければならないため、現地に支店やネットワークがある一部の大手企業でなければ採用が難しい方法です。よって、およそ97.2%が監理団体型、残り2.8%が企業単独型となっています。(2018年末時点。技能実習での在留者数ベース)
参考:外国人技能実習制度とは (JITCO)(②技能実習生の受け入れ方式)
一般監理団体と特定監理団体の違い
監理団体には、一般監理団体、特定監理団体の2種類があります。
一般監理団体は優良監理団体とも言われ、実習生の労働環境や実習内容についてなど様々な優良条件を満たした団体です。一般監理団体では技能実習1号〜3号まで受け入れが可能で、期間は最大5年間(1号1年、2号2年、3号2年)となります。
一方、特定監理団体では技能実習1号、2号の受け入れが可能で、期間は最大3年間(1号1年、2号2年)となります。そのため、技能実習生3号を受け入れる場合は、受け入れ企業、監理団体共に優良条件を満たす必要があります。
監理団体の要件
監理団体として事業を行うためには、主務大臣から許可を受ける必要があります。では、特定監理団体の認定、さらには一般監理団体(優良監理団体)の認定を受けるためには、どのような要件があるのでしょうか。
特定監理団体の場合
- 非営利法人であること
- 業務を実施できる基準を満たしていること
- 業務を遂行できる財産的基礎を持っていること
- 個人情報を適切に保護していること
- 外部役員及び外部監査の措置を行っていること
- 基準を満たす外国の送り出し機関と契約をしていること
- 監理事業を適正に遂行することができる能力を持っていること
- 欠格事由に当たらないこと
一般監理団体の場合
さらに優良な一般監理事業を行う監理団体と認められるためには、法令で定められた高い水準を満たす必要があり、具体的には以下の要件があります。(それぞれ満点の6割以上が必要)
- 実習の実施状況の監査、その他の業務を行う体制(50点)
- 技能等の修得等に係る実績(40点)
- 法令違反・問題の発生状況(5点(違反等あれば大幅減点))
- 相談・支援体制(旧配点:15点、新配点:45点)
- 地域社会との共生(10点)
監理団体の数はどれくらいあるのか?
現在、一般監理事業を行う監理団体は1,673団体、特定監理事業を行う監理団体は1,603団体あります(令和3年3月30日現在)。いずれの場合も、その約95%は協同組合で、残りは商工会議所などです。
また、都道府県別に見ると、一般監理団体の数が最も多いのは東京で191団体、ついで愛知で161団体、広島、大阪と続きます。特定監理団体の数字を見ても、大都市である東京、大阪、福岡、製造業などが多い愛知や広島などの地域に集中していることがわかります。
監理団体の役割と業務
技能実習生の受け入れ企業側は外国人を受け入れるにあたって社内整備など様々な準備が必要です。また、海外から来日する技能実習生も、慣れない日本で生活や就労に不安を抱えているものです。そこで監理団体には、実りある実習を経て安全に実習生が帰国するまで受け入れ企業と実習生をサポートするという、大切な役割があります。
ここではその具体的な業務について順に見ていきましょう。
監査
3ヶ月に1度、受け入れ企業において適切な実習が遂行されているかどうか監査を行います。以下の項目にあるように、実際に現場で実習生と面談を行ったり、生活環境をチェックします。実習生の土日の労働時間や残業時間など、技能実習計画に沿った実習が行われていないと労働基準法に違反する恐れがあるためです。
- 技能実習の実施状況を実地確認
- 技能実習責任者及び技能実習指導員からのヒアリング
- 技能実習生の4分の1以上と面談
- 実習実施者の事業所の設備、帳簿書類等の確認
- 技能実習生の宿泊施設等、生活環境の確認
訪問指導
第1号技能実習の場合、上記の監査とは別に監理責任者の指揮の下に月に1回以上の訪問指導を行います。受け入れ企業において監理団体の職員が実習状況を確認し、受け入れ時に認定された技能実習計画通りに実習が遂行されるよう、指導します。
技能実習計画の作成支援
企業は受け入れ前に、技能実習制度に基づいて技能実習計画を作成し、外国人技能実習機構(OTIT)へ申請、認定を受けなければなりません。この認定がおりなければビザの申請など次のステップへ進めません。企業が実習計画を作成する際には、監理団体は生活環境や労働環境の面、さらに出入国や労働面での法令を遵守しているか、適切かつ効果的に実習が行われるかどうか、という観点から指導します。
送り出し機関の選定・契約、求人の取次
現地の送り出し機関を選定し、企業に代わって求人の取り次ぎをする役割もあります。具体的には、当該の送り出し機関が現地政府に認定されているか、徴収費用の水準は適性かなどを見極めて機関を選定し、監理団体と送り出し機関が契約を交わします。さらに、送り出し機関へ求人情報を渡し、求人を依頼。その後、監理団体は現地で行われる応募者と日本企業との面談に同行しサポートをします。
入国手続き、入国後講習の実施
監理団体では、実習生が日本へ入国するための地方入国管理局への申請から、入国許可を得るまでの事務手続きを行います。ここでは定められた多くの書類が必要となるため、煩雑になりがちな行程をサポートするのが監理団体の役割です。
また、技能実習生が入国した後、日本での生活に備えて講習を行うよう法務省令により定められています。例えば第1号技能実習の場合、日本での活動予定時間の1/6以上の講習が義務付けられています。その内容として以下を網羅しなければいけません。慣れない日本での生活や同僚とのコミュニケーションなど、実際の業務に困らないよう入国後すぐに講習を実施します。
- 日本語
- 日本での生活一般に関する知識
- 技能実習生の法的保護に必要な情報
- 円滑な技能等の修得に資する知識
技能実習生の支援
技能実習生は慣れない日本での生活や実習をする中で、心身共に疲労困憊したり、受け入れ企業へ相談のしづらい労働や金銭に関すること、人間関係などの問題が出てくることもあります。そのような場合でも、監理団体では実習生の母国語で相談に乗れるよう体制を整えています。
また、技能実習生は定められた期間が終了する時に必ず帰国しなければなりません。その際には、実習生と企業とでスケジュールの調整を行い、航空券の手配などを行います(帰国に掛かる費用は企業負担となります)。
一時帰国や急な帰国が発生した場合にも監理団体で所定のサポートを行います。
監理団体に相談するタイミング
それでは企業が技能実習生を実際に受け入れたいと決めたら、どのタイミングで監理団体へ相談するとよいのでしょうか。
前提として、企業が受け入れたい国や業種に対応している監理団体であるかどうかを見る必要があります。そのため、受け入れ検討が始まった段階で監理団体へ相談するとよいでしょう。監理団体へは実現したい計画実習が遂行できるかどうかなど相談ができます。その後、監理団体が決定したら企業は監理団体に加入します。
それ以降について監理団体が行う業務は以下です。
- 技能実習計画作成の支援
- 監理団体が提携している海外の送り出し機関に人材募集の内容を伝える
- 受け入れ企業の現地面談のサポート
- 入国に関する申請、事務手続き
- 実習生の入国後の講習、日本での生活のフォロー
- 技能実習1号認定から2号認定終了時の在留資格の変更手続き
- 技能実習3号認定終了時、在留資格変更申請及び一時帰国時期の相談や航空券の手配など
監理団体の選定ポイント
企業にとって、数ある監理団体の中から自社に最適な団体を選ぶことはなかなか難しいことでしょう。実習生の募集から帰国まで長い期間携わることになる監理団体について、選定するポイントをご紹介します。
実績
まず第一に、これまでにどのくらいの実習生を受け入れ、何年ほどの事業実績があるのかという監理団体の過去の実績を確認してみましょう。経験豊富な団体ほど、様々な面での対応力があり、全体を通して安心して任せられるでしょう。
対応している業種・職種が自社とマッチしているか
次に、監理団体がどこの国の実習生を監理できるのかを確認しましょう。その上で、団体によって得意分野が異なる場合があるため、求める分野に対応しているかを確認するようにしましょう。また、何号認定の技能実習に属しているかで対応できる監理団体が変わりますので、前述の「一般監理事業」か「特定監理事業」かもあわせて確認が必要です。
サポートの手厚さ
法令で義務付けられた監理業務以外にも、実習生の生活面でのフォローや日本語習得のサポートなどにも力を入れているか調べてみるとよいでしょう。
加えて、実習生の母国語を話せるスタッフが充実しているかも大切なポイントです。急な帰国を要するような問題が発生した時など、実習生と意思疎通ができ、親身に相談に乗ってくれる相手がいれば安心できます。
まとめ
監理団体は実に様々な役割、業務を担っていることがお分かりいただけたと思います。外国人技能実習は、日本の高度な知識や技術を実習生が修得することで母国へ持ち帰り、母国の発展に寄与するという国際貢献事業です。監理団体は、企業や従業員の皆さんが国際貢献をしているという誇りを持てるよう、実習生と企業それぞれの立場でサポートを行っています。