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2024.01.25
特定技能2号の取得要件や他の在留資格との違いを紹介
特定技能2号とは、熟練した技能や経験を持つ外国人の在留資格の一つです。特定技能2号を取得すれば、在留資格を更新することで事実上無期限に滞在できます。
これまで特定技能2号の対象分野は限られていましたが、2023年6月9日の閣議決定により、受け入れ可能な分野が拡大されました。[注1]
特定技能2号は企業にとっても外国人労働者にとってもメリットがあるため、正しい知識にもとづいて有効活用しましょう。
本記事では、特定技能2号の取得要件や対象分野、特定技能1号や他の在留資格との違いを詳しく解説します。
[注1]出入国在留管理庁:「特定技能2号の対象分野の追加について(令和5年6月9日閣議決定)」(参照2024-01-05)
特定技能2号とは?概要を解説
2019年4月1日から、外国人の新たな受け入れ制度である特定技能制度が始まりました。[注2]
特定技能制度とは、人手不足が深刻化する特定産業分野において、即戦力となる外国人労働者の受け入れを加速させるための制度です。
特定技能制度では、新たな在留資格として「特定技能」が創設されました。特定技能に含まれる在留資格の一つが特定技能2号です。[注3]
特定技能 | 内容 |
特定技能1号 | 特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格 |
特定技能2号 | 特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格 |
出入国在留管理庁によると、特定技能2号は即戦力となりうる外国人の中でも、「特定産業分野に属する熟練した技能」を持つ人を対象としています。[注3]
特定産業分野とは、中小企業や小規模事業者をはじめとして人手不足が深刻化し、国内人材の確保が困難な状況にある12の産業分野を指します。
これまでは特定技能1号と違って、特定技能2号による受け入れが可能な産業分野は建設分野と造船・舶用工業分野(溶接区分)の2分野に限られていました。しかし、2023年6月9日の閣議決定によって、特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針(分野別運用方針)が見直され、特定技能2号の対象分野が大きく拡大されています。[注1]
特定技能2号の対象分野
特定技能2号の対象分野は、介護分野を除く11の特定産業分野です。[注4]
特定技能2号の対象分野 | 従事する業務 |
ビルクリーニング分野 |
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素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野 |
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建設分野 |
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造船・舶用工業分野 |
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自動車整備分野 |
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航空分野 |
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宿泊分野 |
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農業分野 |
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漁業分野 |
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飲食料品製造業分野 |
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外食業分野 |
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介護分野に関しては、すでに専門的な介護の技能や経験を持つ人向けの在留資格「介護」が存在するため、特定技能2号の対象分野には含まれていません。[注1]
2023年11月には、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野の技能試験が行われ、他の分野でも順次試験が行われていく予定です。[注5]
特定技能2号を取得した外国人は長年の実務経験を持ち、即戦力として活躍することが期待される人材です。11の特定産業分野に含まれる業種の方は、特定技能2号による外国人労働者の受け入れを検討しましょう。
[注2]出入国在留管理庁:「在留資格「特定技能」が創設されます」P1(参照2024-01-05)
[注3]出入国在留管理庁:「特定技能ガイドブック」P3(参照2024-01-05)
[注4]出入国在留管理庁:「特定技能ガイドブック」P4-5(参照2024-01-05)
[注5]NHK:「外国人の「特定技能2号」拡大 新たな追加分野で資格試験始まる」(参照2024-01-05)
6つのポイントで特定技能2号と1号の違いを解説
先述したように、在留資格の特定技能は特定技能1号と2号の2種類です。それぞれ在留期間の上限や、求められる技能水準、永住権や家族の帯同が認められるかなど、さまざまな違いがあります。特定技能1号と2号の違いを6つのポイントで確認しておきましょう。
- 在留期間の違い
- 永住権が認められる要件の違い
- 必要な技能水準の違い
- 日本語試験が免除されるかの違い
- 受け入れ機関による支援が必要かの違い
- 家族の帯同が認められるかの違い
在留期間の違い
特定技能1号と2号の違いの一つ目は、在留期間が認められる長さの違いです。[注3]
特定技能 | 在留期間の長さ |
特定技能1号 | 1年を超えない範囲で法務大臣が個々の外国人について指定する期間ごとの更新、通算で上限5年まで |
特定技能2号 | 3年、1年又は6か月ごとの更新(上限なし) |
特定技能1号の場合、在留期間は1年、6カ月、または4カ月ごとに更新できますが、在留期間は通算5年が上限となっています。[注2]
一方、特定技能2号は在留期間の上限の定めがありません。3年、1年、または6カ月ごとに更新をつづけることで、事実上制限なく日本国内に在留できます。
永住権が認められる要件の違い
2つ目の違いは、永住権が認められる要件です。出入国在留管理庁は、日本に在住する外国人の永住許可に関するガイドラインを制定しています。永住権が認められる要件の一つが、日本国内での10年間の在留です。[注6]
”原則として引き続き10年以上本邦に在留していること。ただし、この期間のうち、就労資格(在留資格「技能実習」及び「特定技能1号」を除く。)又は居住資格をもって引き続き5年以上在留していることを要する。”[注6]
しかし、在留資格が「技能実習」または「特定技能1号」の場合、日本国内での在留期間に数えられません。そのため、特定技能1号を取得して日本に住みつづけても永住権は得られません。
一方、特定技能2号によって日本国内に滞在した場合、10年間の在留期間にカウントされます。特定技能2号は在留期間の上限がなく、何度も更新できるため、永住権の取得要件を満たすことが可能です。
必要な技能水準の違い
3つ目の違いは、求められる技能水準です。[注3]
特定技能 | 必要な技能水準 |
特定技能1号 | 特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能 |
特定技能2号 | 特定産業分野に属する熟練した技能 |
特定技能1号の場合は、特定産業分野に属する「相当程度の知識又は経験」、特定技能2号は「熟練した技能」が求められます。
出入国在留管理庁によると、熟練した技能は「長年の実務経験等により身につけた熟達した技能をいい、例えば自らの判断により高度に専門的・技術的な業務を遂行できる、又は監督者として業務を統括しつつ、熟練した技能で業務を遂行できる水準のもの」を指します。[注1]
つまり、特定技能2号を取得するには、長年の実務経験にもとづいて専門的な業務に従事でき、必要な場合はリーダーとして業務を統括できるようなレベルの技能が必要です。原則として、特定技能1号よりも高い水準の技能が求められます。
特定技能2号に必要な技能水準を満たしているかどうかは、産業分野ごとに行われる技能試験の他、個々人の実務経験によって判断されます。
日本語試験が免除されるかの違い
4つ目の違いは、日本語試験が免除されるかどうかです。[注7]
特定技能 | 日本語試験 |
特定技能1号 | 生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認(技能実習2号を修了した外国人は試験等免除) |
特定技能2号 | 試験等での確認は不要 |
特定技能1号の場合、技能試験に加えて日本語能力を確認するための試験が行われます。ただし、在留資格の「技能実習2号」を修了した場合、日本語試験が免除されます。
一方、特定技能2号の場合は日本語試験がありません。ただし、今後の試験実施要領によっては、日本語試験が開始される可能性はあります。
受け入れ機関による支援が必要かの違い
5つ目の違いは、受け入れ機関による支援が必要かどうかです。特定技能1号の外国人を受け入れる場合、受け入れ機関は支援計画(1号特定技能外国人支援計画)を作成し、職業生活や日常生活、社会生活を円滑に送れるようにサポートしなければなりません。
例えば、以下のような支援の提供が必要です。[注7]
- 入国前の事前ガイダンス
- 出入国する際の送迎
- 住居確保・生活に必要な契約支援
- 生活オリエンテーション
- 公的手続等への同行
- 日本語学習の機会の提供
- 相談・苦情への対応
- 日本人との交流促進
- 転職支援(人員整理等の場合)
- 定期的な面談・行政機関への通報
こうした支援が難しい場合は、特定技能外国人の登録支援機関に依頼し、支援を委託する必要があります。
一方、特定技能2号の場合、受け入れた外国人への支援は義務化されていません。そのため、企業にとって受け入れ時の負担が少ないというメリットがあります。
家族の帯同が認められるかの違い
6つ目の違いは、家族の帯同が認められるかどうかです。特定技能1号の場合、基本的に家族の帯同は認められません。一方、特定技能2号を取得した人は、要件を満たした場合、配偶者や子の帯同が認められます。日本での生活に当たって、家族と一緒に暮らすことが可能です。
[注6]出入国在留管理庁:「永住許可に関するガイドライン(令和5年12月1日改訂)」(参照2024-01-05)
[注7]出入国在留管理庁:「特定技能ガイドブック」P13-14(参照2024-01-05)
特定技能2号の取得要件
特定技能2号の取得要件は、特定産業分野における一定の実務経験と、産業分野ごとの技能試験の合格の2点です。例えば、建設分野の場合、取得要件は以下の2点となっています。[注8]
- 班長として一定の実務経験
- 「建設分野特定技能2号評価試験」または「技能検定1級」に合格
特定技能2号は、特定技能1号の在留資格から切り替えることも可能です。その場合、特定技能1号として在留できる5年間の間に、一定の実務経験を積み、技能試験に合格することが必要になります。
[注8]国土交通省:「建設分野における外国人材の受入れ」P3(参照2024-01-05)
特定技能2号の取得方法
特定技能2号の取得方法は2つあります。
- 一定の実務経験を持つ人が、産業分野ごとの技能試験に合格する
- その他の在留資格から特定技能2号に移行する
特定技能2号は、技能試験に直接合格する方法の他、その他の在留資格から移行して取得することも可能です。例えば、技能実習生として働く方が、特定技能1号の在留資格に移行し、技能試験に合格して特定技能2号の在留資格を得るといったキャリアパスが想定されます。
他の在留資格と特定技能2号の違い
特定技能の他にも、技能実習などの在留資格で外国人労働者を受け入れることができます。特定技能2号と技能実習の違いは以下の表のとおりです。[注9]
技能実習 | 特定技能2号 | |
対象分野 | 90職種165作業 | 介護を除く11の特定産業分野 |
在留期間 | 最大5年間 | 上限なし |
取得要件 | 特になし | 一定の実務経験と技能試験合格 |
永住権の申請 | 不可 | 可 |
家族の帯同 | 不可 | 配偶者と子のみ可 |
受け入れ後の転職 | 不可 | 可 |
技能実習の場合、農業や漁業、建設、食品製造、繊維・衣服、機械・金属など、90職種165作業に従事させることができます。その代わり、在留期間は特定技能1号と同様に最大5年間に限られ、永住権の申請や家族の帯同は認められません。
特定技能2号の取得要件や、他の在留資格との違いを知り、正しい知識にもとづいて外国人労働者を受け入れましょう。
[注9]厚生労働省:「技能実習制度 移行対象職種・作業一覧」(参照2024-01-05)
特定技能2号の取得要件や他の在留資格との違いを知ろう
特定技能2号とは、介護を除く11の特定産業分野を対象として、熟練した技能や経験を持つ外国人を受け入れる在留資格です。特定技能1号と比較して、在留期間の上限がなく、更新をつづけると事実上制限なく日本国内に在留することができます。また要件を満たした場合、永住権の申請や家族の帯同も可能です。
特定技能2号はこれまで対象分野が限られていましたが、2023年6月から受け入れ可能な産業分野が大きく拡大されました。すでに特定技能2号を取得するための新たな技能試験もスタートしており、今後外国人労働者の活用が広がっていくことが期待されています。人手不足が課題の企業は、特定技能2号による外国人の受け入れを検討しましょう。