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2024.10.11

特定技能「ビルクリーニング」で可能な業務や採用方法を紹介

2019年に新たな在留資格「特定技能」の運用がスタートしました。ビルクリーニング分野においても、2024年4月から5年間の受け入れ見込み数を3万7,000人として、特定技能外国人の受け入れが行われています(※)。

この記事では、特定技能の分野の一つ「ビルクリーニング」の概要や、特定技能外国人が従事できる業務内容、在留資格を取得する流れや外国人採用に当たっての注意点について紹介します。

法務省 出入国在留管理庁「特定技能制度の受入れ見込数の再設定」p1

特定技能「ビルクリーニング」とは?

オフィスを掃除する清掃員

2019年4月に新設された特定技能制度は、“国内人材を確保することが困難な産業分野において、労働力として外国人材を受け入れることを目的とする制度”です(※)。

特定技能制度の対象分野は、2024年3月29日の閣議決定により4つの新規分野が追加され、現在は以下の16分野となっています(※)。

  1. 介護分野
  2. ビルクリーニング分野
  3. 建設分野
  4. 自動車整備分野
  5. 航空分野
  6. 宿泊分野
  7. 農業分野
  8. 漁業分野
  9. 外食業分野
  10. 工業製品製造業分野
  11. 造船・舶用工業分野
  12. 飲食料品製造業分野
  13. 自動車運送業分野
  14. 鉄道分野
  15. 林業分野
  16. 木材産業分野

 

ビルクリーニング分野は、制度が新設された当初から対象分野に含まれており、2022年6月の時点で1,133人の特定技能外国人が就労しています(※)。

またビルクリーニング分野では、特定技能1号の在留資格だけでなく、2023年6月9日に対象分野が拡大された特定技能2号での受け入れも可能です(※)。熟練した技能を有し、一定の実務経験を持つ外国人材を採用できるというメリットから、ビルクリーニング分野でも注目を集めています。

株式会社アットグローバル(厚生労働省委託事業)「ビルクリーニング分野における特定技能制度に係る啓発資料」p5

法務省 出入国在留管理庁「特定技能2号の対象分野の追加について」

 

ビルクリーニング業界は人手不足

特定技能制度の対象となるのは、“人材を確保することが困難な状況にあるため外国人により不足する人材の確保を図るべき産業上の分野(特定産業分野)”です(※)。ビルクリーニング分野でも人手不足が深刻化していることから、特定技能制度の対象分野に含まれました。

出入国在留管理庁の試算によると、ビルクリーニング分野において2028年に必要となる就業者数は約105万2,000人です。しかし、ビル・建物清掃員の有効求人倍率(2022年)は、最も高い北陸地方で3.76倍、最も低い南関東地方でも2.04倍となっており、全国的に人材確保が困難な状況となっています(※)。

こうした状況が続いた場合、2028年の就業者数の見込みは約95万4,000人となり、約9万8,000人の人手不足が発生する恐れがあります(※)。

その解決策の一つとされるのが、特定技能制度による外国人材の受け入れです。出入国在留管理庁は、2024年4月からの5年間で最大3万7,000人の特定技能外国人を受け入れることを見込んでいます(※)。

特定技能制度による外国人材の受け入れと、清掃ロボットの導入促進などの生産性向上(5年間で約3万6,000人)や、女性・高齢者への就職勧奨(5年間で約2万5,000人)などの国内人材確保に向けた取り組みと合わせ、将来的な人手不足の解消につながることが期待されています(※)。

法務省 出入国在留管理庁「ビルクリーニング分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」p1-2

 

ベッドメイクもOK!特定技能「ビルクリーニング」で可能な業務内容

特定技能「ビルクリーニング」で可能な業務や採用方法を紹介_解説イラスト

特定技能「ビルクリーニング」によって従事できる業務内容は、出入国在留管理庁のホームページの職務記述書(ジョブディスクリプション)に記載されています。業務内容は「従事する主な業務」と「想定される関連業務」に分類され、特定技能外国人を「想定される関連業務」にのみ従事させることはできません。

なお、ビルクリーニング分野の対象施設には、オフィスビルだけではなく、官公庁、病院、銀行、商業施設、ホテル、レストランなども含まれており、さまざまな場所で働くことが可能です。ただし、ホテルでの接客やレストランサービスは「宿泊」 または「外食」に含まれるため、「ビルクリーニング」の在留資格では働けません(※)。

ここでは、特定技能1号・特定技能2号それぞれの業務内容を紹介します。

株式会社アットグローバル(厚生労働省委託事業)「ビルクリーニング分野における特定技能制度に係る啓発資料」p13

 

特定技能1号で従事できる業務内容

ビルクリーニング分野で特定技能1号を取得した方は、建築物内部の清掃に関する業務に従事できます。

特定技能1号の職務記述書によると、従事する主な業務と、想定される関連業務はそれぞれ以下の表のとおりです(※)。

 

区分 業務内容
従事する主な業務
  • 多数の利用者が利用する建築物(住宅を除く)の内部を対象に、衛生的環境の保護、美観の維持、安全の確保および保全の向上を目的として、場所、部位、建材、汚れなどの違いに対し、方法、洗剤および用具を適切に選択して清掃作業を行い、建築物に存在する環境上の物質を排除し、清潔さを維持する業務
想定される関連業務
  • 複数の作業員の指導、現場の管理、計画作成や進行管理など
  • 清掃用機械器具の維持管理などに関する業務、技能実習責任者の業務、技能実習指導員の業務や、生活指導員の業務(それぞれ主たる業務に該当するものを除く)
  • 建築物と構造上一体と見なせる部分(犬走・アプローチなどの外周部など)の清掃作業
  • 資機材倉庫の整備作業
  • 建物外部洗浄作業(外壁、屋上など。ただし高所作業を伴う窓ガラス・外壁清掃作業は除く)
  • ベッドメイク作業
  • 建築物内外の植裁管理作業(灌水作業など)
  • 資機材の運搬作業(他の現場に移動する場合など)

 

特定技能1号では、一般的なビルクリーニング業の仕事内容に加えて、ベッドメイクや倉庫内の片づけ、外壁や屋上の洗浄などの作業も、「想定される関連業務」として従事できます。

ただし、客室清掃業務の一環として行う場合、ベッドメイク作業も「従事する主な業務」に含まれます。特定技能1号の職務記述書でも、“床、浴室、トイレ、洗面台などの清掃からアメニティ補充やベッドメイク作業など、衛生かつ美観が整えられた客室を商品として納品するために必要な一連の業務である客室清掃業務は主な業務に含まれる”と記載されているからです(※)。

法務省 出入国在留管理庁「特定技能1号の各分野の仕事内容(Job Description)」

(PDF:https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/001281057.pdf

 

特定技能2号で従事できる業務内容

ビルクリーニング分野で特定技能2号を取得した方は、“建築物内部の清掃に、複数の作業員を指導しながら従事し、現場を管理する業務および同業務の計画作成、進行管理その他のマネジメント業務”に従事できます(※)。

特定技能2号の職務記述書によると、従事する主な業務と、想定される関連業務はそれぞれ以下の表のとおりです(※)。

 

区分 業務内容
従事する主な業務
  • 多数の利用者が利用する建築物(住宅を除く)の内部を対象に、衛生的環境の保護、美観の維持、安全の確保および保全の向上を目的として、場所、部位、建材、汚れなどの違いに対し、方法、洗剤および用具を適切に選択して清掃作業を行い、建築物に存在する環境上の汚染物質を排除し、清潔さを維持する業務に、複数の作業員を指導しながら従事し、現場を管理する業務のほか、同業務の計画作成、進行管理その他のマネジメント業務
想定される関連業務
  • 建築物清掃業および建築物環境衛生総合管理業の人的要件である清掃作業監督者の業務
  • 特定技能1号の「想定される関連業務」に、複数の作業員を指導しながら従事し、現場を管理する業務および同業務の計画作成、進行管理その他のマネジメント業務

 

特定技能2号では、特定技能1号における業務内容に加えて、複数の作業員を指導する監督業務や、計画作成・進行管理などのマネジメント業務にも従事できます。そのため、特定技能2号を取得するための要件は、特定技能1号よりも厳しくなっています。

法務省 出入国在留管理庁「特定技能2号の各分野の仕事内容(Job Description)」

(PDF:https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/001265886.pdf

 

特定技能「ビルクリーニング」の取得方法

ここでは、日本での就労を希望する外国人の方が、ビルクリーニング分野において特定技能1号・特定技能2号を取得するための要件をそれぞれ解説します。

 

特定技能1号を取得するための要件

ビルクリーニング分野で特定技能1号を取得するには、「技能水準」と「日本語能力」の2つの要件を満たす必要があります(※)。

 

技能水準 ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験

※ただし、ビルクリーニング分野に関する技能実習2号を良好に修了した場合は試験免除

日本語能力 「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験(N4以上)」

※日本語試験については、職種を問わず、技能実習2号を良好に修了している場合は試験免除

 

ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験は、厚生労働省から委託を受けた全国ビルメンテナンス協会のホームページから申し込みが可能です。試験は日本国内だけでなく、インドネシア、フィリピン、タイ王国、スリランカでも実施されています。

法務省 出入国在留管理庁「ビルクリーニング分野」

 

特定技能2号を取得するための要件

ビルクリーニング分野で特定技能2号を取得するには、特定技能1号よりも高い「技能水準」と、一定程度の「実務経験」の2つの要件を満たす必要があります(※1)。

 

技能水準 「ビルクリーニング分野特定技能2号評価試験」または「技能検定1級」

※技能検定とは、全部で132職種の技能レベルを評価する国家検定制度で、試験に合格すると「技能士」を名乗ることができる(※2)

実務経験 建築物衛生法などで定められた建築物内部の清掃に、複数の作業員を指導しながら従事し、現場を管理する者としての2年以上の実務経験(※1)

 

特定技能1号と違って、ビルクリーニング分野の技能実習2号から特定技能2号に移行することはできません。

なお、ビルクリーニング分野における実務経験については、ビルクリーニング分野特定技能協議会が策定した「現場を管理する者としての実務経験の内容及びその確認方法等に関する規程」に詳しく記載されています(※3)。

※1 法務省 出入国在留管理庁「ビルクリーニング分野」

※2 厚生労働省「技能検定制度について」

※3 厚生労働省「現場を管理する者としての実務経験の内容及びその確認方法等に関する規程」p1

 

特定技能「ビルクリーニング」の外国人材を採用するには?

特定技能外国人の受け入れに当たって、受け入れ機関(企業)がしなければならないことは3つあります。

  • 欠格事由がないか確認する
  • 受け入れに関する誓約書を作成する
  • ビルクリーニング分野特定技能協議会に加入する

 

欠格事由がないか確認する

受け入れ機関に欠格事由がある場合、特定技能外国人の受け入れは認められません。

例えば、過去1年以内に非自発的離職者(整理解雇)を発生させている場合、欠格事由に当たります(※)。一人でも整理解雇を行った企業は、翌年度まで特定技能外国人の受け入れを待つ必要があります。

株式会社アットグローバル(厚生労働省委託事業)「ビルクリーニング分野における特定技能制度に係る啓発資料」p10

 

受け入れに関する誓約書を作成する

特定技能外国人の受け入れを行うには、さまざまな申請書や届出書の作成が必要です。その中でも重要なのが、「ビルクリーニング分野における特定技能外国人の受入れに関する誓約書」です。

誓約書に記載されているとおり、特定技能外国人を雇用する事業者は、以下の要件を満たす必要があります(※)。

  1. 建築物における衛生的環境の確保に関する法律第12条の2第1項第1号に規定する建築物清掃業または第8号に規定する建築物環境衛生総合管理業の登録を受けた営業所において、特定技能外国人を受け入れられていること
  2. 特定技能外国人は知事登録を受けた営業所で直接雇用されるものであること
  3. 特定技能外国人の業務内容が厚生労働省が公表している職務記述書に適合していること
  4. 厚生労働省が設置するビルクリーニング分野における特定技能外国人の受入れに関する協議会の構成員であること
  5. 協議会において協議が整った事項に関する措置を講ずること
  6. 協議会に対して必要な協力を行うこと、また、厚生労働省による調査、指導等に協力すること

厚生労働省「ビルクリーニング分野における特定技能外国人の受入れに関する誓約書」

 

ビルクリーニング分野特定技能協議会に加入する

受け入れ機関は、特定技能外国人の受け入れを行う前に「ビルクリーニング分野特定技能協議会」の構成員になる必要があります。評議会への加入に当たって、費用はかかりません。

評議会への加入申請は、「ビルクリーニング分野特定技能協議会加入申請ページ」から行うことが可能です(新規入会の場合)。入会手続きは、登録支援機関などに代行してもらうことはできません。

厚生労働省ホームページより申請後、担当者宛にメールにて連絡が行われます。フリーメールを登録している場合、セキュリティ上届かない可能性があるため、ご注意ください。

厚生労働省「ビルクリーニング分野特定技能協議会加入申請ページ」

 

特定技能「ビルクリーニング」で即戦力となる外国人材を採用しよう!

ビルクリーニング分野は、特定技能制度における16の対象分野の一つです。即戦力となる外国人材の受け入れにより、人手不足の解消につながることが期待されています。

ビルクリーニング分野の対象施設は、オフィスビルだけではありません。官公庁、病院、銀行、商業施設、ホテル、レストランなど、さまざまな場所で働いてもらうことが可能です。

ただし、特定技能外国人を受け入れるには、「ビルクリーニング分野における特定技能外国人の受入れに関する誓約書」における要件を満たす必要があります。また受け入れ機関の欠格事由に該当していないか、事前に確認しておきましょう。

ANSONG協同組合 事務局

私たちANSONG協同組合は「日本企業の素晴らしい技術」と「中国および東南アジアの技術不足という課題」の架け橋となり、外国人技能実習制度を通し、御社の事業と日本経済の発展に寄与します。

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