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2024.09.12

特定技能「外食」とは?外国人を雇用する際のポイントを解説

2019年4月に特定技能制度が始まり、在留資格「特定技能1号」および「特定技能2号」が創設されました(※)。外食業分野では、特定技能1号・2号それぞれで外国人の受け入れが可能です。

この記事では、特定技能「外食(外食業)」の対象となる業種や、取得するための要件、特定技能外国人を採用するポイントについて解説します。

農林水産省「外食業分野における特定技能外国人制度について」p5

特定技能「外食(外食業)」とは?

在留資格「特定技能」では、生産性の向上や国内人材の確保のための取り組みを行っても、なお、人材の確保が困難な状況にある産業分野に限り、一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人労働者の受け入れが可能です(※)。

その対象分野の一つには、外食業(飲食店、持ち帰り飲食サービス業、配達飲食サービス業、給食事業など)も含まれます。

外食業分野で受け入れを目指すのは、“食品衛生に配慮した飲食物の取扱い、調理および給仕に至る一連の業務を担い、管理することができる知識・技能を有する人材です(※)。

衛生管理に関する知識・技能 食中毒の予防などHACCPを含む食品衛生管理について正しい知識を身につけ、適切に対応できる。
飲食物調理に関する知識・技能 調理作業における各種工程、調理器具、料理、労働安全などに関する知識を身につけ調理業務を担える。
接客全般に関する知識・技能 接客に必要となる基本的な日本語、おもてなしの考え方を理解し実践する上で必要となる知識などを身につけ、適切に対応できる。


2023年12月末の時点で、1万3,312人の1号特定技能外国人が在留しており、特定技能2号による受け入れも始まっています(※)。

農林水産省「外食業分野における特定技能外国人制度について」p3, 5, 7

 

特定技能「外食(外食業)」ができた背景

在留資格「特定技能」に外食業分野が含まれる理由は2つあります。

  • 外食業における有効求人倍率は、全産業平均と比べて高く、人手不足が深刻化している
  • インバウンド需要の高まりから、多言語対応やホスピタリティなどの価値を生み出せる人材の確保が課題となっている

農林水産省によると、外食業における有効求人倍率は3.56%と、全産業平均の1.16%を上回っています。特に、飲食店主・店長(7.11%)や飲食物給仕係(5.06%)の有効求人倍率が高い水準にあり、人手不足に苦慮する事業者が増えています(※)。

一方で、外食業分野では増加するインバウンドへの対応のため、効果的な対策が求められています。特に、多言語対応やホスピタリティなど、外食業ならではの付加価値を持つ人材の確保が急務です。

特定技能制度を通じて、即戦力として活躍できる外国人材を受け入れることにより、こうした課題の解決につながることが期待されています。

農林水産省「外食業分野における特定技能外国人制度について」p2

 

特定技能「外食(外食業)」の対象となる業種・業務

カフェで働く外国人男性

特定技能外国人の受け入れが可能となるのは、飲食店、持ち帰り飲食サービス業、配達飲食サービス業、給食事業などの飲食サービス業を行う事業所です(※)。

特定技能外国人を受け入れられる事業所
客の注文に応じ調理した飲食料品、その他の飲食料品をその場で飲食させる飲食サービス業 食堂、レストラン、料理店などの飲食店や、喫茶店など
飲食することを目的とした設備を事業所内に有さず、客の注文に応じ調理した飲食料品を提供する持ち帰り飲食サービス業 持ち帰り専門店など
客の注文に応じ、事業所内で調理した飲食料品を客の求める場所に届ける配達飲食サービス業  仕出し料理・弁当屋、宅配専門店、配食サービス事業所など
客の求める場所において調理した飲食料品の提供を行う飲食サービス業 ケータリングサービス店、給食事業所など


ただし、風俗営業法で規定される「風俗営業」および「性風俗関連特殊営業」を営む事業所では、特定技能外国人を就労させることができません。

また特定技能1号・2号で従事できる業務の範囲についても、「外食業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」において定められています。

農林水産省「外食業分野における特定技能外国人制度について」p8

 

1号特定技能外国人が従事する業務

1号特定技能外国人は、主として外食業全般(飲食物調理、接客、店舗管理)に従事する必要があります。ただし、在留期間全体のうち一部の期間であれば、調理担当や接客担当など、特定の業務にのみ従事することも可能です(※)。

従事する業務
飲食物調理 客に提供する飲食料品の調理、調整、製造を行うもの
接客 客に飲食料品を提供するために必要な飲食物調理以外の業務を行うもの
店舗管理 店舗の運営に必要となる上記以外のもの


農林水産省「外食業分野における特定技能外国人制度について」p10

 

2号特定技能外国人が従事する業務

2号特定技能外国人は、外食業全般(飲食物調理、接客、店舗管理)に加えて、店舗経営に関する業務に従事できます。1号特定技能外国人と異なり、2号特定技能外国人には、外食業において“トータルで管理できる人材としての役割が求められます。

例えば、主として店舗経営・管理業務に従事しながら、飲食物調理や接客などの業務を行うことも可能です(※)。

従事する業務
店舗経営 店舗をトータルで管理するために必要な業務で、飲食物調理・接客・店舗管理以外のもの(店舗の経営分析、経営管理、契約に関する事務など)


農林水産省「外食業分野における特定技能外国人制度について」p10

 

特定技能「外食(外食業)」を取得するための要件

外食業分野において、外国人の方が在留資格「特定技能」を取得するための要件は以下のとおりです。

特定技能1号を取得する要件

特定技能1号を取得するには、以下の試験に合格するか、「医療・福祉施設給食製造」の第2号技能実習を良好な成績で修了する必要があります(※)。

特定技能1号の要件 試験
技能水準および業務上必要な日本語能力 外国人食品産業技能評価機構(OTAFF)が実施する「外食業特定技能1号技能測定試験」
日本語能力(基本的な日本語能力) 「日本語能力試験(JLPT)」のN4以上、または「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」

 

1号技能測定試験や日本語能力試験は、それぞれ国内・国外の会場で受験できます。ただし、1号技能測定試験の実施方法は、国内試験はペーパーテスト(マークシート)方式、国外試験はコンピュータ・ベースド・テスティング(CBT)方式となります(※)。

農林水産省「外食業分野における特定技能外国人制度について」p12, 14

 

特定技能2号を取得する要件

特定技能2号を取得するには、以下の試験への合格に加えて、一定以上の実務経験が求められます(※)。

特定技能2号の要件 試験・実務経験
技能水準および業務上必要な日本語能力 外国人食品産業技能評価機構(OTAFF)が実施する「外食業特定技能2号技能測定試験」および「日本語能力試験(JLPT)」のN3以上
実務経験 食品衛生法の営業許可を受けた飲食店において、複数のアルバイト従業員や特定技能外国人などを指導・監督しながら接客を含む作業に従事し、店舗管理を補助する者(副店長、サブマネージャーなど)としての2年間の実務経験

技能測定試験の内容も幅広く、衛生管理や飲食物調理、接客全般、店舗運営に関する知識・判断能力・計画立案能力などを問う試験問題が出題されます(※)。

農林水産省「外食業分野における特定技能外国人制度について」p13, 16

 

特定技能「外食(外食業)」の外国人材を採用する方法

特定技能「外食」とは?外国人を雇用する際のポイントを解説_解説イラスト

外食業を営む方が、特定技能外国人を採用するまでの流れは以下のとおりです。

  1. 特定技能雇用契約を締結する
  2. 支援計画を策定する(特定技能1号の場合)
  3. 食品産業特定技能協議会に加入する(2024年6月14日から)
  4. 在留資格の申請をする
  5. 特定技能外国人が就労を開始する


特定技能雇用契約を締結する

まずは、特定技能1号・2号のいずれかを取得した外国人と、雇用契約(特定技能雇用契約)を締結します。

外国人の方がまだ来日していない場合(国外で試験を受けた場合など)は、オンライン面接を通じて採用候補者を決定するとよいでしょう。

 

支援計画を策定する(※特定技能1号の場合)

受け入れ対象が1号特定技能外国人の場合は、支援計画(1号特定技能外国人支援計画)の作成が必要です。

支援計画には、職業生活・日常生活・社会生活上の支援として、省令で定められた以下の10項目を含む必要があります(※)。

事前ガイダンス
  • 雇用契約締結後、在留資格認定証明書交付申請前または在留資格変更許可申請前に、労働条件・活動内容・入国手続き・保証金徴収の有無などについて、対面・テレビ電話などで説明
出入国する際の送迎
  • 入国時に空港と事業所または住居への送迎
  • 帰国時に空港の保安検査場までの送迎・同行
住居確保・生活に必要な契約支援
  • 連帯保証人になる、社宅を提供するなど
  • 銀行口座などの開設、携帯電話やライフラインの契約などの案内、各手続きの補助
生活オリエンテーション
  • 円滑に社会生活を営めるよう日本のルールやマナー、公共機関の利用方法や連絡先、災害時の対応などの説明
公的手続きなどへの同行
  • 必要に応じ住居地・社会保障・税などの手続きの同行、書類作成の補助
日本語学習の機会の提供
  • 日本語教室などの入学案内、日本語学習教材の情報提供など
相談・苦情への対応
  • 職場や生活上の相談・苦情などについて、外国人が十分に理解できる言語での対応、内容に応じた必要な助言・指導など
日本人との交流促進
  • 自治会などの地域住民との交流の場や、地域のお祭りなどの行事の案内や、参加の補助など
転職支援(人員整理などの場合)
  • 受け入れ側の都合により雇用契約を解除する場合の転職先を探す手伝いや、推薦状の作成などに加え、求職活動を行うための有給休暇の付与や必要な行政手続きの情報の提供
定期的な面談・行政機関への通報
  • 支援責任者などが外国人およびその上司と定期的(3カ月に1回以上)に面談し、労働基準法違反などがあれば通報


支援計画の作成または実施については、出入国在留管理庁長官の登録を受けた「登録支援機関」に委託することも可能です。

出入国在留管理庁「特定技能外国人受け入れる際のポイント」p9

 

食品産業特定技能協議会に加入する(※2024年6月14日から)

外食業分野で特定技能外国人を受け入れるには、食品産業特定技能協議会(協議会)の構成員になる必要があります。2024年6月14日以降に受け入れを行う場合は、出入国在留管理庁で在留諸申請をする前に、協議会への加入申請が必要です(※)。

入会金や年会費などの費用について、農林水産省は「当面の間、徴収はしない」としています(※)。

農林水産省「食品産業特定技能協議会(飲食料品製造業分野・外食業分野)について」

 

在留資格の申請をする

出入国在留管理庁に対して、受け入れが決まった特定技能外国人の在留資格の申請をします。

在留資格認定証明書の交付申請は、受け入れ機関の職員などによる代理申請が基本です。ただし、すでに日本国内に在留している方など、在留資格変更許可申請を行う場合は、本人申請が原則となっています(※)。

在留申請が完了したら、「在留資格認定証明書」を本人に交付し、査証(ビザ)の申請を行ってもらいましょう。

外務省「特定技能外国人を受け入れるまで」

 

特定技能外国人が就労を開始する

査証(ビザ)が発給されると、在留カードが交付され、特定技能外国人の入国が認められます。入国後、外国人が就労を開始するまでの間に、以下の支援を遅滞なく実施しましょう(※)。

  • 生活オリエンテーションの受講
  • 住居地の市区町村での住民登録
  • 給与口座の開設
  • 住宅の確保

外務省「特定技能外国人を受け入れるまで」

 

特定技能外国人を雇用する際のポイント

特定技能外国人を雇用する際のポイントは2つあります。

  • 雇用形態は直接雇用で、かつフルタイム雇用とする
  • 雇用契約を締結する前にキャリアアッププランを作成する

 

雇用形態は直接雇用で、かつフルタイム雇用とする

特定技能外国人の雇用形態は、直接雇用に限られ、かつフルタイムで業務に従事するような雇用契約を結ぶ必要があります。

特定技能制度における「フルタイム」とは、“労働日数が週5日以上かつ年間217日以上であって、かつ、週労働時間が30時間以上であることを指します(※)。

農林水産省「外食業分野における特定技能外国人制度について」p11

 

雇用契約を締結する前にキャリアアッププランを作成する

また特定技能外国人と雇用契約を締結する前に、キャリアアッププランを作成し、書面を交付(または電磁的記録を提供して説明)しなければなりません。

キャリアアッププランの様式は任意のものを使用しても構いません。キャリアアッププランには、以下のような内容を記載するとよいでしょう(※)。

  • 想定されるキャリアルート
  • 各レベルの業務内容および習熟の目安となる年数
  • レベルアップするときに必要な経験・実績、資格・検定など

出入国在留管理庁「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領」p14

 

特定技能「外食(外食業)」の要件や受け入れ時のポイントを知ろう

2019年4月から始まった特定技能制度を活用すれば、一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人材を雇用できます。

外国人材の受け入れによって、外食業が直面する人手不足や、インバウンド需要への対応といった課題解決につながる可能性があります。特定技能外国人を採用するまでの流れや、雇用契約を結ぶ際の注意点について知っておきましょう。

ANSONG協同組合 事務局

私たちANSONG協同組合は「日本企業の素晴らしい技術」と「中国および東南アジアの技術不足という課題」の架け橋となり、外国人技能実習制度を通し、御社の事業と日本経済の発展に寄与します。

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